先進美術館という政府案が話題になっている
特定の美術館へ補助金を出して現場や市場を活性化させるというねらいだというが
これが批評家たちの反感を買っているというのが粗方の印象である
この案件についてただただ嫌悪感を覚えるという反射的な見解を私は持ちたくない
この早計な嫌悪感は村上隆がかつて美術界から抱かれたものに似ているような気がする
彼は旧式の学会至上主義を否定して国外の芸術市場に目を向けることで成功を治めた
にも関わらず彼の芸術論はあまりこの国では踏襲されていない
支持しているのはほんの一部の批評家のみだ
これには理由がある
日本の芸術市場規模は米国や中国に比べると格下である
これが国内総生産量や富裕層人数の比率と噛み合っていないからこの国の芸術市場は成長の余地があるという
まずこの見解は誤りである
この国は富国強兵の時代に文化的に大きく後れをとった
芸術家たちと政府の間に深い溝を作ってしまったのは言うまでもない
そして戦中戦後の政の最中に日本の芸術遺産の多くも国外へ流れていったのだ
だからして経済と芸術の規模が現在のように反比例に近い形で釣り合わなくとも不自然ではない
そしてまさにここに日本の美術学会が政府による市場干渉を嫌う理由がある
要するにお役人に指図されるのが嫌なのだ
彼らのせいでこの国の芸術は何百年も遅れてしまったという固定概念が払拭されない限り
この国の政治と芸術は結ばれないだろう
芸術と金の話にはとりあえず反対しておくのが得策なのだとう輩や
そこまで下衆でなくとも
芸術は綺麗であれという幻想に生きる人々も
これに同調してしまうから始末が悪い
ただ学会の上役たちは実害を受けたわけでもないのに
その恨み辛みを固持することで己の地位が保たれればそれで良いのだ
この悪循環が様式美と化してしまった挙句の成れの果てが今の日本の芸術市場だ
これに現代美術のような何もかも並列化してしまった
後追いでしか無い複製のようなもので立ち向かおうというのも酷な話である
この風潮の中で実際に保持金が出たとしてもそのほとんどは結局学会の天下りに与ったようなお偉方に渡るだけだろう
我々にはそれだけの恩恵を受ける権利があると豪語する風評のみを味方につけた権利者が
金を毛嫌いすることで芸術家然とし
その金をせしめることで地位を守るのだ
そんな安い演出劇に踊らされないためには
面白いから是非やってみろと嗾け
その動向を一部始終しかと伺えば良いのだ
私たちは金と芸術の関係を知らな過ぎる
芸術の前で金は不浄なものでしかないというのは幻想であり
それをわかっていれば
頭ごなしに否定して見せるような真似はしないはずだ
どうすれば本当の意味で日本の芸術市場を蘇らせることが出来るのか
この財政案にその可能性は微塵も無いのだろうかと
考える余地くらいはあってしかるべきだ
最悪なのはこのまま政府始動で強行されてしまうことで
それを心ない悪行だと私たちが絶望してしまい
その行く末を最後まで見届ける気力を失ってしまうことだ
日曜美術館を見ていて途中で飽きて他のことをしてしまうのとはわけが違う
これは全て私の妄想であり議論されている本筋とは何ら関係無いところの話である