誰が見るわけでもないのに年の瀬になるとブログを更新せねばという使命感が湧いてくるレーベル代表・庭野です。さて、今年も個人的すぎてなんの参考にもならない"マイベストディスク大賞2019"でお茶を濁してまいりましょう!尚、ギリギリまで所要メディアのランキングなどを参考に聞き漏れチェックを行っていますので滑り込みランクインもご容赦ください。
ソロ名義でのリリースは9年ぶりとなる。これを聴いたのが今年の2月だったが、結局この時期まで私の中で不動の1位であり続けた(ちなみにあとは順不同です)。
Tim HeckerのVirginsや坂本龍一のasync、それに12k周辺の音が纏まったようなアルバム。
何かと似ていることを指摘したいわけではない。
嘗て彼が共作や共演で交流のあった作家や作品からの影響が渾然一体となっただけのことで、むしろこれだけ色々な要素がここまで簡潔に要約されて作品として自然であるという点で高く評価されて然るべきアルバムである。
まるで山から海へ水が流れていくかの如き自然な音楽だ。
#2 Underworld&The Necks / Appleshine Continuum
日本ではあまり名前を聞かないNecksとのコラボレーションということで情報も限られているのだろう。
かくいう私も彼らのファーストを聞いたのが数年前のことで、今まで彼らのことを知らずに来たことを悔やんだものだ。
この作品で彼らを知ったならば是非ファーストアルバム"SEX"を聞いてもっと驚いて欲しい。
Underworldが1年かけて取り組んだというプロジェクトであるDRIFTシリーズの中で彼らは3曲ほど共作しているようだが、そのうちの1曲は締めくくりに出たボックスセットにしか収録されていないようだ。
まずこのコラボ作品が発表されたのがシリーズ第1弾EPのA Very Silent Wayで10分程の楽曲だが、ほとんどNecksの曲にしか聞こえない。
私がこの共作を知ったのは第2弾EPの先行シングルAppleshine Continuumという楽曲で、これが本格的な即興セッションで作られた作品のようだ。なぜなら1曲47分強というアルバムレベルの超尺曲だからだ。
オープニングは穏やかであるもののNecksの持つ静寂さとは違ってハウスビートを基調にしたダンストラックなのでやや不安になるが、徐々にキックの音量が弱まってきてテンポはそのままにNecksらしいオルガンとウッドベースとドラムのミニマルアンサンブルが立ち現れてくる。後半では徐々にシンセ音が絡んできてそこへピアノの演奏が入り込む。
エフェクト処理やミックスをリアルタイムで如何程干渉し合っているのか定かではないが、お互いの距離感や音のバランスに適度な気遣いが感じられるとても繊細なジャズテクノだ。
そのままだがこう形容するしか手立てが思いつかない。
The Necksが80年代の終わりに既に90年代はもちろんゼロ年代以降の現代ジャズ的サウンドをも指向してしまっているという事実はさておき、彼らの先進性は現行ジャズ界隈よりもむしろエレクトロニック周辺の作家たちに見出されているのかもしれない。
#3 Prototypes(およびNoto名義による諸作品の再発) / Alva Noto
https://music.apple.com/jp/album/prototypes/1457349419?uo=4&at=1001lSy6
https://music.apple.com/jp/album/spin/1457353288?uo=4&at=1001lSy6
https://music.apple.com/jp/album/infinity/1457351747?uo=4&at=1001lSy6
ドイツを代表する電子音響レーベルRaster-Notonが統合前のRster-MediaとNotonに分裂したのが2年前、そして今年に入ってNotonからAlva NotoのファーストアルバムPrototypesが配信リイシューされ、それから程なくして彼がNoto名義で発表していた作品群も配信された、これらはすべてフィジカルではプレミア価格および入手困難であったため当時を知らない私にとっては非常に有難い再発であった。
Prototypesはタイトルが表す通りそれ以後のグリッチサウンド、接触不良やエラーまたは原子音であるサイン波によって成形されていくダンスミュージックの夜明けを見据えたミニマルトラック集でありテクノがミニマル性を深化させていく過程、クリックハウスからグリッチへの変容が確認できるとても重要な作品である。
そしてそれ以前の作品からはグリッチサウンドというものが現代音楽やノイズミュージックとダンスミュージックを接続するための交信手段として用いられる前夜の精査段階を体験できる貴重な音源だ。
これらの経緯はなにも彼ではなく、例えばPan SonicやFennesz、池田亮司やPeter Rbergなどの初期作品からも伺えることであるが、中でも彼の音楽が興味深く響くのは彼が東ドイツ出身であり70年代のクラフトワークを知らずに育ち、例えば蝙蝠との交信を図ろうとしたという逸話やラジオ放送が軍事通信のために遮断されてしまっても、その通信音をいつまでも聞いていたというところから彼の音楽が始まっているというルーツを想像できるからだろう。
制約の中でしか本当の自由は生まれないという私の持論からして彼の作ってきた作品は少なからず理想的に聞こえる。
#4 摩訶不思議 千手披露 / 仙波清彦
www.sonymusicshop.jp
日本を代表するドラマー仙波清彦の様々なリーダー作をまとめたベスト盤。
ソニーミューッジックのオーダーメイドファクトリーという企画で注文が規定数に達して今年商品化されたという。
ここへたどり着いたのはいくつかの偶然が重なってのことで、発端は細野晴臣のLove Peace&Trance。そのユニットのヴォーカリストの一人である小川美潮が参加していた、はにわオールスターズのライブ映像に感銘を受けたというのがその経緯である。
その映像は仙波清彦とはにわオールスターズの"インコンサート"というDVDの一部で、すぐさま購入したのは言うまでもない、
仙波清彦の名を知ったのはカヒミカリィのミュージックパイロットというラジオ番組で聞いた、彼のプロジェクトの一つSemba Sonic SpearのGoorgui Fethieuであるが、それも収録されている。
中でもはにわオールスターズの自由奔放な発想はバンドのメンバーでもあった斎藤ネコを経由して椎名林檎に受け継がれ、Ringo Expo 08へ帰結しているから是非確認してほしい。
韓国のインディーロックバンドSesoneonのギターヴォーカルを務めるファン・ソユンによるソロユニットSo!YoON!のデビューアルバム。バンドよりもソロのアルバムが先にリリースされるという事情は色々あるのだろうが(メンバーが兵役のためバンドの活動がストップしているらしい)、ロックやソウル ヒップホップなど(謎のジャケットイラストも含め)雑多な要素が入り混じりつつ、周辺の若手ミュージシャンも起用したバラエティに富んだ内容だが、彼女の鈴木茂ばりのギタープレイや太くも伸びやかなハイトーンボイスがスタイリッシュにまとめ上げている。
ちなみに同じく今年リリースされたSesoneonの"Go Back"(シングル)が哀愁感たっぷりの名曲である。
#6 Oglon Day / Oren Ambarchi , Mark Fell , Will Guthrie & Sam Shalabi
特にOren Ambarchiの鳴らすギターやベースの音とMark Fellのお家芸とも言える独特なテンポ感のキックとハンドクラップによるビートが百均グッズのシンデレラフィットの如くぴったりと噛み合っていてそれだけでも大いなる発見と言える。
そこへまたNecksを思わせるようなジャズドラムがミニマル性を増幅させていく。誰が弾いているのか分からないがオルガンらしき音も通奏低音のように鳴っていていっそのことNecksとやっても良かったのではないかと思ってしまうのだが、後半に入ってくるSam Shalabiによるウードというハープの原型のような民族楽器の音やドラムがポリリズミックに変調していく展開はこのグループならではの聞きどころなのだろう。おそらく発起人であろうOren Ambarchiの発想力と実行力を賞賛したい。
#7 Point Line Cloud(リイシュー) / Curtis Roads
オリジナルのリリースは2004年だが各曲に付記されている制作年を見ると99年から2003年に作られた楽曲のコンピレーションのようである。そして今年この重要作をリイシューしたのはWarpやMegoからも作品を発表しているLorenzo Senniが主催するレーベルPrestol?である。
なんでもグラニュラーシンセシスという音響合成技法を駆使しているらしく、原始的な電子音やノイズが耳の周りを行き交う。
12kのテイラーデュプリーが編纂した"マイクロスコピックサウンド"というコンピレーションアルバムがあるが、これはまさに音の中に潜り込んでいくような心地になる。
宣伝のつもりはないが私が2016年にリリースしたBeatificallyというアルバムのまさに原典だと思った。
Flying LotusのYou're Dead!やThundercatのDrunkが私には未来的過ぎてあまり理解出来ずにいたが、このハイエイタスカイヨーテのドラマーClever Austinのソロアルバムは音響的な志向が浸透していてとても理にかなった現代ビート音楽だ。ドラマーならではの音の余白に対する意識も素晴らしいと見える。前者と後者の違いは何か、それを説明するにはかなりの文量が必要だし、不必要に何かを批判せばならなないので、それらを割愛し一言で言ってしまえば、引用性の明確さである。
アニマルコレクティブという発見と発想の連続体のようなグループを作り上げた、ノアベンジャミンレノックスのソロプロジェクト。アニマルコレクティブ同様に牧歌的アヴァンポップの延長上にありながらも、この新作は前作までと少し毛色が違うと感じたのは私だけだろうか。何しろこれまであくまで延長でしかないソロの方にはほとんど無関心であったのに、この作品には一聴して惹かれるものがあったのだから。
このアルバムがこれまでのそれと違うのはどこか都会的な香りがするところだろうか。都会といってもビル街ではなく、西海岸のビーチのような観光地だ。
バンドでもソロでも共通しているのは底抜けの陽気さであるが、このアルバムには加えて哀愁感が漂っていて、そこが心地よい。
この哀愁感はスティーヴハイエットの1982年の作品"Down On The Road By The..."に通じるのではないだろうか。しかしながら、私はこのBuoysを聴いたしばらく後になってそれを確認することになる(後付けなのだ)。
#10 ~~~ / Ana Roxanne 滑り込み♪
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#11 Fear in a Handful of Dust / Amon Tobin
https://music.apple.com/jp/album/fear-in-a-handful-of-dust/1453133464?uo=4&at=1001lSy6
前作ISAMが描いた幻想、非現実、仮想空間を自ら否定、解体、再定義したリアリスティックなエレクトロアコースティック作品。
#12 The Flower and the Vessel / Felicia Atkinson
#13 Fluid Motion / 30/70
#14 An Acceptable Loss / Valgeir Sigurðsson
https://music.apple.com/jp/album/an-acceptable-loss/1489316670?uo=4&at=1001lSy6
すっかり劇伴作家という肩書きが板につき始めた彼の新作もまた音楽的にとても魅力的なサウンドトラック作品である。彼においてはポストクラシカルなどというジャンルで括って欲しく無い。
#15 Juice B Crypts / Battles
メンバーが一人づづ減っていく程そのバンドとしての自由度が増し、アイデンティティが強固になっていくバトルスの新作。今にして思えばタイヨンダイの功績など"Atlas"における歌唱くらいだったのだと思ってしまう。#16 井上順のプレイボーイ講座 / 小西康陽とプレイボーイズ 滑り込み♪
#17 Akasaka / LISACHRIS 滑り込み♪