KAWAGOE NEW SOUNDS

Brand New Electronic & Acoustic Music from Kawagoe Street , Japan..

MUSICS2020・川越ニューサウンド代表・庭野が選ぶ今年のベストディスク(ほとんどディスクじゃない!)

こんにちわ。春過ぎから発作的に新作シリーズの制作に没頭、この7ヶ月の期間で60曲(10時間半)リリースという自己最高の作曲ペースを叩き出すに至ったレーベル代表・庭野です。という前置きからお察しの通り、聞くよりも作る方に時間と労力を使ったという逃げ口上を用意しても尚、私の耳を更新させてくれた数多の新作の中でも特に私の制作にも影響を与えたと言っても過言ではない作品をここに選出しておきたいと思います。さて、先述の新作シリーズも予定通りに年内で治めることが出来ましたので、世間の音楽も早めに総括しつつ、(そういえば)レーベル10周年という節目を一人寂しく噛み締めながら、来年も生き存えるための算段をしておきたいと思います。

#1 川染喜弘 - 街live19 at銀座 楽器店

今年初めにツイッター上でアップロードされた先鋭音楽、現代美術において最も重要なパフォーマー川染喜弘の楽器店での即興ライブ動画。試奏用に展示されたシンセサイザーのデモシーケンス やプリセット音をまるで自分がプログラミングしたものであるかのように操作し見事な音響パフォーマンスに昇華させている。この終わりのないライブ演奏にピリオドを打つのは彼がアーティストであることを知らない無知を恐れぬ楽器店のスタッフか警備員であるというその光景を含めて現代アートとしても説得力を十分に備えたパブリックアートである。


#2 Speaker Music - Black Nationalist Sonic Weaponry (Planet μ)
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Black Nationalist Sonic Weaponry

Black Nationalist Sonic Weaponry

  • Speaker Music
  • エレクトロニック
  • ¥1528
Speaker MusicことDeForrest Brown Jr.が提示するビートはキックとハイハットとスネアが高速で羅列された一見抽象的で難解なリズムで、一部のレビューなどでも踊ることを拒否するビートであると形容もされているが、ジャズのように緻密なだけで、聞いていればリズムの構造が見えてくるし、一定の反復パターンの頭が分かってくる、そしてやがて拍子の規則性からも開放されてこの独特のグルーヴに体が反応するようになるだろう。リズムを掴むまでの早い遅いは聞く者の環境や音楽的素養によって個人差がある。これがダンスミュージックに聞こえない御仁は騙されたと思って3日くらいずっとかけっぱなしにしてみると良い。少なくともあなたがクラブ通いを日課にしているようなパーティピープルやブログで作品批評をする自称音楽マニアであるならば、これくらいのリズム感覚を習得しておくのは責務であると言える。本人もライブ動画で見事なダンスを披露しているから参考にしよう!

youtu.be

90年代からシーンを牽引してきたマイクパラディナス主宰のプラネットミューは常にその時代の新興ビートに共鳴し、多くの重要作をリリースしてきたが、とりわけ2012年にリリースされたRudi ZygadloのTragicomediesと今作は、それまで同レーベルでピックアップしてきた流行型のビートを再解釈し、そのまま終息させてしまうようなパワーさえ感じた。
このアルバムのリンクを貼ろうとして気付いたのだが、どうやらCDでの販売は無いようだ(アナログを数量限定で販売)。昨今の音楽流通事情を考えるとデータオンリーは当然の選択なのだが、それでもここまでの老舗レーベルがそういう方法をとっているのを見ると多少慄いてしまう。さて、来年どこから日本盤が出るだろうか。。
niwanokns.hatenablog.com


#3 Vladislav Delay - Rakka (Cosmo Rhythmatic)
Rakka

Rakka

Rakka

niwanokns.hatenablog.com
レビューは↑のブログを参照ください。

#4 Oval - SCIS (Thrill Jockey)
SCIS [HEADZ243]

SCIS

SCIS

  • Oval
  • エレクトロニック
  • ¥1528
彼の前作と今作は実に明快で音楽的な構造で作られているが、この二作の大きく違う点は彼の逆説的で内包的だったユーモアまたは自虐を伴う加虐といった、いわゆるOval的なエッセンスが今回かなり直接的にその音作りに表れている点だろう。
個人的には、彼のこれまでの間接的な表現技法の完成形に至るまでの思考や志向そして施行を自ら少しずつ剥ぎ取って行くような、まだ生乾きの瘡蓋を剥がすような嫌らしい痛みを感じてしまった。
その痛みの量に比して音色に厚みや歪みが加算されているようで、聴く側も無傷ではいられない。
可愛らしいイラストをあしらったジャケットデザインが逆説的に響く。


#5 Arca - @@@@@ (XL Recordings)
@@@@@

@@@@@ - Single

@@@@@ - Single

  • Arca
  • エレクトロニック
  • ¥1528
niwanokns.hatenablog.com

レビューは↑を参照ください。
1時間超のシングルEP。その後に普通に出たアルバムは合計38分。こういう斬新な概念も含めてバリアフリーミュージック。

#6 Carl Stone - Au Jus / The Jugged Hare (Unseen Worlds)
Au Jus / The Jugged Hare

Au Jus / The Jugged Hare - Single

Au Jus / The Jugged Hare - Single

  • Carl Stone
  • IDM / エクスペリメンタル
  • ¥306
現代音楽、電子音響、サンプリングコラージュというセンテンス以前に素材を選ぶセンスに脱帽。近年は特にカットアップの大胆さに狂気すら感じる。作品を聞くたびに、こんなものを切り刻んでしまっていいのかと。後にこの曲を含むアルバムをリリース。アルバムのタイトルがなぜ自分の名前のアナグラムなのかは不明。
Stolen Car

Stolen Car

  • Carl Stone
  • エレクトロニック
  • ¥1528


#7 Jon Hassell - Seeing Through Sound (Pentimento Volume Two) (NDEYA)
Seeing Through Sound (Pentimento Volume Two) [解説付 / 国内仕様輸入盤CD] (BRNDEYA7CD)

niwanokns.hatenablog.com
レビューは↑を参照ください。


#8 Against All Logic - 2017-2019 (OTHER PEOPLE)
2017-2019 [Analog]

2017 - 2019

2017 - 2019

  • Against All Logic
  • エレクトロニック
  • ¥1528
niwanokns.hatenablog.com
レビューは↑を参照ください。

#9 The Beneficiaries - The Crystal City is Alive (AXIS)
THE CRYSTAL CITY IS ALIVE (ザ・クリスタル・シティ・イズ・アライブ)

Jeff Mills Presents: The Crystal City Is Alive

Jeff Mills Presents: The Crystal City Is Alive

  • The Beneficiaries
  • テクノ
  • ¥2037
近年の様々なアーティストとのコラボレーションの中でもとりわけ高い革新性を秘めたジェフミルズの新プロジェクト。
冒頭からの女性詩人によるポエトリーリーディング、アフロ的なリズムアプローチ、デトロイトテクノ現代アートの接続などの観点から左記のSpeaker Musicの重要作とも呼応しているようだ。革新性という言い方はカッコつけ過ぎているかもしれない、要は音が若々しいということだ。


#10 さかいゆう - Touch The World (newborder recordings / UMJ)
Touch The World(初回限定盤)(DVD付)

Touch The World

Touch The World

個人的には川口春奈・主演のテレビドラマ「受験のシンデレラ」のエンディングテーマ「But I'ts OK!」に感銘を受けて以来、新曲が出るとチェックしていたのだが、今作はL.AにN.Y、ロンドンにサンパウロでレコーディングをというだけあって驚くほどの完成度で文字通り世界レベル(1曲目はその都市名をひたすら連呼するだけの歌)。さらにシティポップ的なエッセンスもうまく相まっていてお洒落とくれば文句ないだろう。サウンドや手法は後追いであるものの、例えばサカナクションをはじめとする日本の有能なグループがそのコンセプトや性質上、現段階では踏み込んでいけない所に彼は身一つで飛び込んでいるような印象を受ける。


#11 The Necks - Three (Fish Of Milk)
Three
thenecksau.bandcamp.com
去年のアンダーワールドとのコラボレーションには驚かされたが、今年も彼らの新しいセッションが聴けるということが何よりも歓びである。


#12 Jeff Parker - Suite for Max Brown
Suite for Max Brown(ボーナス・トラック1曲 / 解説付き / 正方形紙ジャケット仕様)[HEADZ244]

Suite for Max Brown

Suite for Max Brown

  • Jeff Parker
  • ジャズ
  • ¥1528
傑作だった前作の延長線上、そして近年のトータスでの欲求不満、現代ジャズ的な音作りなどをうまくまとめ上げたという印象は否めないが、私こそトータスには不満が募っているのでこういう作品は大歓迎である。ギリギリのところでフライングロータスほどのごった煮感もカマシワシントンのような大仰さも出ていない落ち着いたミニマルな作りも好ましい。

#13 shakleton & Waclaw Zimpel - Primal Forms (Cosmo Rhythmatic)
Primal Forms

Primal Forms

Primal Forms

シャクルトンは裏切らない。

#14 恩田晃 - Cassette Memories 1 2 3 (ROOM40) Reissue
Ancient & Modern (Cassette Memories Volume One)
Bon Voyage! (Cassette Memories Volume Two)
Cassette Memories Volume 3: South Of The Border

ROOM40も裏切らない。

#15 Kate NV - Room for the Moon (Rvng Intl.)
Room for the Moon (日本独自CD化/ボーナス・トラック収録・解説・歌詞・対訳付き) [ARTPL-134]

Room for the Moon

Room for the Moon

  • Kate NV
  • エレクトロニック
  • ¥1528
関係ないが、大貫妙子がプロデュースした安田成美の「ジンジャー」というアルバムは素晴らしい。これを聞いた日に何故かサブスクリプションで聴けるのを見つけて一緒に聞いていたというだけの話。ついでにローリーアンダーソンの「O Superman」も聴きたくなってそれも一緒に聞いていた。
ジンジャー

ジンジャー

  • 安田成美
  • J-Pop
  • ¥1528


#16 Drøne - The Stilling (Pomperipossa Records)
The Stilling (feat. Mark Van Hoen & Mike Harding)

これをピックアップした時に特に感想をメモってもいなかったみたいなので、何故リストに入れたのか今もって定かではありません。改めて聴いてみましたが、この季節は足元のファンヒーターが煩くてイヤフォンで聴いていてもこのような聴く環境を選ぶ作品は全く精査できないのです。だから冬は嫌いです。冬になるたびに人間も冬眠するべきだと心の中で唱え始めるのです。でもこれが出た時期も1月だったので当然足元でファンヒーターが家電なりの通奏低音かましていた状態だったと思うのですが、まあ聞き流してるうちにどこかにハイライト的な山場があってそれに反応したんでしょう。しかしながらこういう音楽にハイライトを求めるのは野暮というものでして、ついぞその山場も今となっては一体どこだったのか皆目検討もつかないのでございます。罪滅ぼしと言ってはなんですが、このユニットのメンバーであるMark Van Hoenの重要作も以下にご紹介しておきます。
The Revenant Diary

The Revenant Diary

  • Mark Van Hoen
  • IDM / エクスペリメンタル
  • ¥1528


#17 Masayasu Tzboguchi & Hiroki Chiba - Soundscape of Electronic and Acoustic (Self Release)
masayasutzboguchi.bandcamp.com
1月のライブを録音した音源。開催したライブハウスへの基金を募る目的での配信リリース。アコースティック演奏とエレクトロニクスの融け合いも見事ながらフィールドレコーディングらしき音も相まって豊穣な音響空間が即興を交えたライブ演奏の中で構築されている。


#18 踊ってばかりの国 - 私は月には行かないだろう (FIVELATER)
私は月には行かないだろう※初回限定盤(CD+DVD)

私も月には行かないだろう(旅行とか嫌いなんで)。。

#19 Triptykon - Requiem (Century Media Records)
レクイエム(ライヴ・アット・ロードバーン 2019)[エクストリーム・アヴァンギャルド・メタル オーケストラをフィーチャしたレクイエム3部作/CD+DVD(日本語解説書封入)]

私と同様に10年前に自主レーベルを立ち上げた元セルティック・フロストのトム・ガブリエル・フィッシャー(スイス)による新バンドプロジェクトですが、同じ10年でもその充実ぶりは私とは天と地の違いでして、一つの集大成となる作品がこの「レクイエム」というオーケストラを率いた壮大なヘヴィーメタル組曲、それもこれも含めて彼の功績は80年代終わりからのもので、このプロジェクト自体も左記バンド時代から構想が断片的に開示されてきたという歴史があるのでございます。

#20 Fiona Apple - Fetch the Bolt Cutters (Epic, Clean Slate)
Fetch the Bolt Cutters

各メディアでの絶賛ぷりと多少の温度差は否めないし、おそらく8年ぶりというブランクが影響しているのではないかという勘ぐりしか出来ないが、やはり純粋に音や歌がユニークだ。荒井注のなんだ馬鹿野郎的なテンションで延々とフライングリザーズみたいなことをしているようなイメージが浮かんで可笑しくなってしまった。


#21 Andy Shauf - The Neon Skyline (Anti-)
The Neon Skyline

まずはジャケットデザイン大賞を進呈したい。そしてこの軽さが素晴らしい。そのトムペティかポールサイモンか(マチューボガートかスティーヴンダフィーか)というような軽やかさに少々の重暗い終末感が混ざり合い、それをまたジャケットが具現化しているようでイメージが頭の中で回って酔う。前作までピアノだったのをギターに替えて作曲したようで、それを聞いたせいかもしれないが、なるほど微妙にノリが違う。モンチコンの今年の1位これでしょ、知らんけど(星4つのようです)。。
Wildflowers

Wildflowers

Super 2

Super 2

  • マチュー・ボガート
  • フレンチポップ
  • ¥1935
Duffy

Duffy

  • ステファン・ダフィー
  • ポップ
  • ¥1630


#22 Matmos - THE CONSUMING FLAME: OPEN EXERCISES IN GROUP FORM (Thrill Jockey)
Consuming Flame

The Consuming Flame: Open Exercises in Group Form

The Consuming Flame: Open Exercises in Group Form

  • マトモス
  • エレクトロニック
  • ¥5093
niwanokns.hatenablog.com
レビューは↑を参照ください。
実績と人脈があれば絶対やってみたいですね、こういう企画アルバムは。


#23 shotahirama - Stay on the Light (SIGNAL DADA)
Stay on the Light

Stay on the Light

Stay on the Light

  • shotahirama
  • エレクトロニック
  • ¥1528
niwanokns.hatenablog.com
レビューは↑のブログを参照ください。

  • 総評

ベストディスクと言っておきながら今年の新作で盤を買ったのは、サブスクとCDのリリース日をずらしていたOvalのSCISとサブスクで聴けないThe NecksのThreeのみである。かくいう自分も去年からフィジカルリリースを止め、今年はBandcamp限定でのリリースとなった。このような進捗状況を省みたところで膨大な音楽歴史を引き合いにしてしまえば、差し詰め音楽の伝達方法など移ろいゆくのが世の常だという事実が浮かび上がるだけなのだが、そもそも唯一形のない芸術とも言える音楽がこのように形を変えて進化していくということに格別な思いを馳せるのもまた一興である。来年以降はふつふつと21世紀の音楽を予感させるようなものが立ち現れては消えるようなもどかしい時期に入るだろう。その中で20世紀の音楽はあらゆる観点で補完され、既成と未成で膨れ上がった仮想空間は宇宙よろしく膨張を余儀なくされ、私たちは大いなる歴史・アーカイヴに寄り添うことでいつの間にか未来を迎えることになる。それまでおよそ30年ほど、私たちはこの不毛の時代を生き抜かなくてはならない。それを毛嫌いすればするほど、その期間は長引くだろう。あなたがこの世の中をどうにかしたいと思うのであれば、立ち止まり蹲ってなるべく何もせずに生きるべきである。それがこの不毛な世紀を乗り越える唯一の術である。いわばこの精神的氷河期は、人類にとって二度目のルネッサンスなのである。我々は補完され、そして再生する。。



- KNS 10TH ANNIVERSARY DISCOGRAPHY 2020 -